夜と朝の狭間に酔う

 

 

 

 

夜と朝から一番遠い時間。

 

それでも、この街の喧噪はやむ事がない。

 

餌を求める野良犬の様に

私は飯屋を探していた。

 

そして・・・

 

その店は

 

夜の名残の霧の中に存在した。

 

どこにでもある

 

L字のカウンターだけのラーメン屋。

 

私は迷う事なく扉を開いた。

 

 

席の半分は埋まっている。

 

深夜にしては、客入りが上等。

 

 

 

きっと旨いのだ。

 

旨くなくて、どうして人が集まる。

 

旨くなくて、どうして深夜に人が集まるのだ。

 

ただし・・・

 

誰もラーメンを食べていない。

 

よく観察すると・・・

 

酒だけを飲み続ける年老いた男達のワールド。

 

つまみはネギチャーシュー。

 

 

私のさして遠くない明日がここにあるのか。

 

 

柱に小さく・・・

 

『ウーロンハイ始めました。』

 

殴り書きのPOPが目に止まる。

 

久しぶりに見た滅法汚い字。

 

主人一人の店。

 

 

軟弱な男なら泣き言を漏らして、出て行きたくなる様な店。

 

 

ジリジリと背中を焼く様に熱いスポットライト浴びながら、

奥にある券売機に向かった。

 

券売機のボタンの数の割にメニューはとても少ない。

 

 

 

しかし・・・

 

私が私であり続ける為には・・・

 

迷う事なく「味噌ラーメン」のボタンを・・・

 

決して大きくはないが、上品で美しい親指で・・・

 

その親指が少し白くなるくらいに強く押した。

 

 

 

アープ兄弟がそうする様に、店がすべて見渡せる

カウンター奥に座り、チケットをゆっくり置いた。

 

 

電波障害でまともに写らない小さなテレビから、雑音にしか

聞こえない音楽が鳴り響く。

 

 

 

そして・・・

 

それほど待たされる事もなく味噌ラーメンは出された。

 

器の中を覗くと、どこまでもひたすらいに黒いスープ。

 

 

「おめーまちげーてねーだろうな。」

心でその言葉を吐き出した。

 

 

そのどこまでもひたすらいに黒いスープを、蓮華を使って飲んでみた。

 

どこにも味噌の味がない・・・

 

味噌の味がないばかりか、すんげーしょっぱい。

 

そして・・・不味い。

 

 

私の腰にホルスターがあり、

そのホルスターにコルトがあれば、

目にも留まらぬ早さで主人の腹に、3発の鉛玉を叩き込むところだ。

 

 

 

そうだ、まだ麺を食べていない。

 

 

この許されないスープも麺を包むと、美味となるのでは。

 

私は麺をすすった。

 

 

そして不味い。

 

 

いや私の勘違いということもある。

腹が減りすぎて、味覚がおかしくなっているのかも。

 

今一度、麺を口に含んだ。

 

 

本気で不味い。

 

 

主人の胸に3発の鉛玉。

 

3発が一つの音にしか聞こえない程に早く。

 

 

私は半分も食べずに店を後にした。

 

こんなに不味いラーメンが世の中にあっていいはずがない。

それに頼んだのは料金¥120UPの味噌ラーメンなのだ。

 

 

 

 

私は自分の味覚を確かめたく、翌日またその店に行った。

 

 

もちろん・・・同じ時間に。

 

 

頼んだのは「醤油ラーメン」。

 

そしてどこまでもスープは黒く不味かった。

 

そう確かに味噌とはまったく違う味で不味かった。

 

 

どうしたらこんな不味いラーメンが今時作れるんだ!

 

 

常連の年老いた男達がラーメンを食べない訳もわかった。

 

 

主人の額に3発の鉛玉。

 

 

 

 

明日はつけ麺を試すべきなのだろうか・・・

 

夜と朝から一番遠い時間に私は彷徨った。